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2012年3月

エロイーサと虫たち

Eloisas『エロイーサと虫たち』
ハイロ・ブイトラゴ文
ラファエル・ジョクテング絵
宇野和美訳
さ・え・ら書房
本体価格 1300円

おとうさんとふたり、生まれた町をはなれて、遠くの町にひっこしてきたわたし。おとうさんが仕事をさがすあいだ、わたしは学校へ。でも、心細くて、しんぱいで、まるでじぶんが虫になったみたい……。

南アメリカの国コロンビアの絵本。緻密にかきこまれた巨大な虫たちは、こわいもの見たさで、思わず見入ってしまいます。
長く続く政府とゲリラ軍との抗争によって、国内避難民が300万人もいると言われるコロンビア。(避)難民の現状を伝える絵本として、本書はラテンアメリカの国連難民高等弁務官事務所の支援を受けて、メキシコで特別版が出版され、ラテンアメリカ各地で子どもたちに配布されています。

「やすみじかんは なかなか おわりません」のシーンは、訳しながら、そうそう、授業時間より休み時間が所在なくて苦痛だった、と幼い頃の転校の経験を思い出したり、長男が保育園をかわったとき、「xxくんはジャングルジムが好きね。外遊びのときいつものぼっているわ」と保育士さんに言われて、せつなかった記憶がよみがえってきたりしました。

「でも、そうやってこの町のことをおぼえました」のページで、虫の店員さんがエロイーサにリンゴをわたすポーズは、『アライバル』(ショーン・タン)へのオマージュとのこと。船が異国の都会につく大きな見開きの場面で、右上に描かれている巨大な像と同じです。

日本ではとてもめずらしいラテンアメリカのオリジナル絵本。在日のラテンアメリカにつながる子どもたちに手わたしてもらえたらと思います。小学生だけでなく、中学生でも感じるところがありそうです。

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鴻巣友季子さんお話とワインの会 〜なぜ翻訳は苦しく愉しいのか〜

スペイン語とポルトガル語を中心に語学スクール(通信・通学コース)を運営しているイスパニカが、すてきなイベントを開催します。スペイン語やポルトガル語で翻訳を仕事にできたら、との夢を持つ受講生が多いけれども、翻訳者の日々の生活や苦労はなかなか知る機会がなく、具体的なイメージがいだけないということから、第一線で活躍している翻訳家の生の声を聞くチャンスを持ちたいと企画したもの。

(以下、イスパニカの告知より)===========
『嵐が丘』を新訳された翻訳家の鴻巣友季子さんをお迎えし、訳書を世に生み出すまでの苦しみ、そしてよろこびをたっぷりと語っていただきます。よその国、自分ではない他者の経験をなぞり、最終的には自分の言葉で語るのが翻訳だと、鴻巣さんはいいます。だから翻訳も時代と共に変化すると。現在取り組んでいる『風と共に去りぬ』の新訳では、スカーレットの言葉が現代にどう甦るのでしょうか? それを生みだす翻訳者の日々は? お話のあとは生ハムとワインで乾杯しながら、ゆっくりと歓談する時間をご用意しています。

【鴻巣友季子さんプロフィール】
翻訳家・文芸評論家・エッセイスト。英文学の翻訳をメインに活躍。2003年『嵐が丘』新訳で注目され、またヴァージニア・ウルフ『灯台へ』でも評判となる。最新刊は『遅い男』(早川書房)。次の新訳は『風と共に去りぬ』。エッセイ集『全身翻訳家』(筑摩書房)等、随筆、対談でも人気。2012年2月18日にNHK総合「ようこそ先輩」に出演。

日時:2012年3月17日(土)  14:00-16:45
場所:新橋駅前ビル1号館4階 (フィルポート)
   JR新橋駅汐留口1分
参加費:3,500円(一般) 
    3,000円(イスパニカ在校生・元受講生)
定員:80名 
主催:イスパニカ http://www.hispanica.org
お申し込み:hola@hispanica.org 
   tel. 03-3630-9711 fax. 03-3630-9717
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先日NHKで放映された「ようこそ先輩」では、シルヴァスタインのThe missing piece(ぼくを探しに)でとてもすてきな授業を展開なさっていた鴻巣さん。
私もスタッフとして参加しますので、とても楽しみにしています。
めったにない機会です。ご興味のある方、ぜひぜひご参加ください。

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アリアドネの糸

111_2『アリアドネの糸』
ハビエル・ソビリーノ文
エレナ・オドリオゾーラ絵
宇野和美訳
光村教育図書
本体価格 1500円

お父さんに叱られて、家をとびだしたアリアドネ。何気なくポケットに入っていた糸だまをとりだし、ポーンとけりました。糸はほどけて、木にからみついてブランコになり、綱渡りの綱になり、傘になり……。自在に形をかえる糸で遊んだアリアドネが最後に行きついたのはおうちの前。こんがらかったアリアドネの心の糸は、無事ほどけるのでしょうか。

幼稚園に行くか行かないかのころ、暗くなる前に帰ってきなさいと言われていたのに、夢中で遊ぶうちに気づくとあたりが夕闇に包まれていて、あわてて帰ったものの、「暗くなる前に帰るやくそくだったでしょ。帰りたくないなら、お外の子になりなさい」と、母にしめだされ……心細かったそんな思い出が、訳しながらふっとよみがえってきました。
シンプルながら奔放な線と大胆な余白で、子どもの悲しみに静かによりそうオドリオゾーラの世界をお楽しみください。

編集担当のYさんが苦労されていたのが紙。「原書と同じような紙がなかなかないんです!」と、白さの加減とインクののり具合(しずみ具合?)を確かめながら、さんざん選んでこの紙になりました。印刷のことは編集者さんにおまかせなのですが、そうやって少しでもよい本にしようと尽力していただけるのはとてもありがたく、うれしいことでした。

昨年後半から年明けまで目の回るような日々が続き、久しぶりのブログになりました。
ご感想など、どうぞお寄せくださいね。


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