翻訳のこと

まだ間に合う!夏の半日翻訳講座リャマサーレスのまき

ずっと忙しくしていて、ブログでのお知らせが遅れましたが、夏の半日翻訳講座を今年も開講します。6期目、つまり6年目となり、講座としては恒例ですが、何か、前とは違うものにしたいなと考えて、毎年フレッシュな気持ちで取り組んでいます。
テクストはどれにするか、毎年頭を悩ませますが、今年は、フリオ・リャマサーレスのEl valor del aguaを読んで即決。
レオンの田舎から都会に出てきて、ずっと家族のために働いてきたおじいちゃん、ところがこのところだんだんとボケてきて、孫のフリオ以外、だれもおじいちゃんのことを相手にしなくなっています。施設に入り、もう家族の顔もわからなくなったおじいちゃんですが、ある日フリオに大事なものをたくし……。無駄なくシンプルな、しかし美しく味わいのあるリャマサーレスの文章をお楽しみください。
事前課題の提出期限は8月5日ですが、A4で2、3枚の量なので、今からでも十分間に合います。午前午後とも、残席いくらかあります。
極上のテクストを読み合い、参加者同士の訳文を比べながら、日頃の疑問をぶつけたり、翻訳のプロセスをさぐったり、発見のある時間にしたいと思っています。
ご参加をお待ちしています。

Img_0002【日時】2011年8月18日(土)  
     午前コース10:00~13:30 
     午後コース14:30~18:00
     ※内容は同じです。
【場所】イスパニカ溜池山王教室(「溜池山王」駅8番出口すぐ)
【定員】各12名
【参加費】8000円+テキスト代2000円=合計1万円(税込)
【テキスト】El valor del agua
詳しくは、こちら

テキスト見本1(画像をクリックしたら大きくなります)*原出版社より転載許可済。
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テキスト見本2(画像をクリックしたら大きくなります)
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私が手がけている児童文学や文学に限らず、エンタメでもセルフヘルプでも、もっともっとスペイン語の本が日本で紹介されるといいなあと日頃から思っています。質疑の時間に、ご要望があれば翻訳出版のノウハウもご説明します。児童書に限らず、これから本を訳してみたいと思っている方も、お待ちしています。


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鴻巣友季子さんお話とワインの会 〜なぜ翻訳は苦しく愉しいのか〜

スペイン語とポルトガル語を中心に語学スクール(通信・通学コース)を運営しているイスパニカが、すてきなイベントを開催します。スペイン語やポルトガル語で翻訳を仕事にできたら、との夢を持つ受講生が多いけれども、翻訳者の日々の生活や苦労はなかなか知る機会がなく、具体的なイメージがいだけないということから、第一線で活躍している翻訳家の生の声を聞くチャンスを持ちたいと企画したもの。

(以下、イスパニカの告知より)===========
『嵐が丘』を新訳された翻訳家の鴻巣友季子さんをお迎えし、訳書を世に生み出すまでの苦しみ、そしてよろこびをたっぷりと語っていただきます。よその国、自分ではない他者の経験をなぞり、最終的には自分の言葉で語るのが翻訳だと、鴻巣さんはいいます。だから翻訳も時代と共に変化すると。現在取り組んでいる『風と共に去りぬ』の新訳では、スカーレットの言葉が現代にどう甦るのでしょうか? それを生みだす翻訳者の日々は? お話のあとは生ハムとワインで乾杯しながら、ゆっくりと歓談する時間をご用意しています。

【鴻巣友季子さんプロフィール】
翻訳家・文芸評論家・エッセイスト。英文学の翻訳をメインに活躍。2003年『嵐が丘』新訳で注目され、またヴァージニア・ウルフ『灯台へ』でも評判となる。最新刊は『遅い男』(早川書房)。次の新訳は『風と共に去りぬ』。エッセイ集『全身翻訳家』(筑摩書房)等、随筆、対談でも人気。2012年2月18日にNHK総合「ようこそ先輩」に出演。

日時:2012年3月17日(土)  14:00-16:45
場所:新橋駅前ビル1号館4階 (フィルポート)
   JR新橋駅汐留口1分
参加費:3,500円(一般) 
    3,000円(イスパニカ在校生・元受講生)
定員:80名 
主催:イスパニカ http://www.hispanica.org
お申し込み:hola@hispanica.org 
   tel. 03-3630-9711 fax. 03-3630-9717
===============

先日NHKで放映された「ようこそ先輩」では、シルヴァスタインのThe missing piece(ぼくを探しに)でとてもすてきな授業を展開なさっていた鴻巣さん。
私もスタッフとして参加しますので、とても楽しみにしています。
めったにない機会です。ご興味のある方、ぜひぜひご参加ください。

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今年もスペイン語「夏の半日翻訳コース」

昨年、一昨年に続いて今年もイスパニカ主催で、スペイン語の半日翻訳講座を開講します。

日時:2009年8月29日(土) 13:30~17:15
場所:東京外国語大学本郷サテライト4F
(本郷壱岐坂上:地下鉄本郷3丁目から5分、 JR御茶ノ水・水道橋から8分)
講師: 宇野和美
対象: 文法をひととおり理解している中級者
定員: 15名
テキスト: 
Morris, es mi cumplean~os!  

ひととおり文法を理解している方なら無理なく読める、楽しい幼年童話をテキストに、翻訳をするには本文をどこまで読みとりたいか、日本語とかけはなれた文をどのように訳せるか、会話を訳すコツなどなど、講義とワークショップ形式で考えていきたいと思います。受講料等、詳しくはこちら(トップページの「夏の半日翻訳コース。再び!」から)をどうぞ。
1年に1ぺんのお楽しみ! さまざまな気づきのある時間となるよう今年もがんばります。8月最後の土曜日、スペイン語にどっぷりつかってみませんか?

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『アラブ、祈りとしての文学』

『アラブ、祈りとしての文学』
岡真理著
みすず書房, 2008.12
本体価格 2800円

私たちが書かない物語の運命がどうなってしまうか、あなた、分かっていて? それは敵のものになってしまうのよ。
イブラーヒーム・ナスラッラー『アーミナの縁結び』

この切実なせりふは、この本のある章の巻頭に引用されたもの。
今、悲惨な世界を前に、文学は何ができるのか。小説は無能なのか?――占領下のパレスチナを実際に訪れ、大国に翻弄されるアラブ世界から世界を見つめてきた岡さんは、この本で繰り返し問いかけます。
アラビア語圏と私の守備範囲であるスペイン語圏は一見関係なさそうですが、周縁という分母でくくると、さまざまな共通項がうかびあがってきます。文学や翻訳に興味のある方に、とても示唆的な一冊だと思います。
昨年末、空爆・侵攻されたガザのもようを綴った『ガザ通信』(サイード・アブデルワーヒド著、岡真理・TUP訳、志葉玲写真、青土社)も合わせてどうぞ。

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賢者の贈りもの

中学1年のころ、ものすごく本好きの友だちがいました。本好きと言っても、小さい頃からずっと本に親しんできたというのではなく、マンガばかり読んできた彼女は、その頃いきなり本のおもしろさにめざめ、図書室の本を手当たりしだいに読んでは、おもしろかった本のことをしゃべりまくっていたのです。その子に「すっごくおもしろかった」言って読まされたのが、O・ヘンリ短編集の中の『赤い酋長の身代金』という話。
ひねりをきかせた表現が、それまで自分がふれてきた本の書き方とぜんぜん違っているのに衝撃をうけ、そのときはじめて私は「海外文学」というのを意識しました。当時1冊120円だった文庫本のO・ヘンリ短編集全3巻をこづかいで順々に買い、さらに同じ人の訳した英米文学の作品を読んでいきました。この人が訳したものなら別の作品もおもしろいに違いないという信頼感が働いたのは確かで、そう考えると、それが私にとって「翻訳家」にあこがれるきっかけにもなったようです。
季節がら、ふと思いたって古い文庫本に収録された『賢者の贈りもの』を読み返し、ずっと忘れていた学校の図書室を思い出しました。

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夏の半日翻訳コース

通信添削のスペイン語講座でおなじみのイスパニカが、昨年に引き続き、今年も教室形式の翻訳コースを開きます。

日時:8月23日(土) 13:30-17:15
場所:東京外国語大学本郷サテライト4F(本郷3丁目より徒歩5分)
テキスト:Marte y las princesas voladoras
            (Elena Odriozolaのイラストの入った短い読み物)

詳しくは、イスパニカのホームページ(「夏の半日翻訳コース、再び!」をクリック)をどうぞ。
通信添削の受講生ではない方も、入会金なしで受講できます。
半日どっぷりと、スペイン語にとりくんでみませんか?

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スペインに渡った日本の児童文学

Natsunoniwa_img どういう本なら、海を越えられるのだろう?――

翻訳を志すようになって以来ずっと、そんなことを考えつづけています。
スペイン語圏で翻訳出版された日本の児童読み物(絵本をのぞく)にどのようなものがあるかというと、私の知る限り、佐藤さとる著『おばあさんのひこうき』と、湯本香樹実著『夏の庭』の2点しかありません。
これは、『夏の庭』のスペイン語版の表紙。この作品はカタルーニャ語でも刊行されましたが、今は残念ながらどちらも品切重版未定状態です。
異国情緒ではなく、登場人物たちのこまやかな心の動きを伝えるこういう作品が、もっと海を渡るといいのにと思うのですが……。

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石井桃子集6 児童文学の旅

昨年読んだ児童文学関係の本のうち、いちばん心に残ったのが、石井桃子さんの『児童文学の旅』でした。岩波書店刊行の全集の6巻目です。

ミス・ポターの単純な、「もみの木の下のa sandy bankに住んでいました」というような文章を訳すとき、私には、そのサンディ・バンクを心に描くことができず、文字だけを訳していると、良心の呵責ををうけるのです、じつは、ニア・ソーリーへゆくのも、その風土を見てきたいからです、というようなことをいったとたん、スティーブン氏は、かんらかんらと笑いだし、しばらく、笑いがとまらなくなった。その実、そこにいた三人とも、ポターが、はたして「サンディ」ということばで何を意味したか、話してくれることはできなかったのだが。
(『児童文学の旅』199-200ページ)

1950年代から70年代にかけての英米の旅行記ですが、それを読むと、石井さんが、いかに翻訳にまっすぐに取り組んでこられたか、いかに素直に、やわらかな心で人と出会い、敬意を持って作品と接してこられたかが、ひしひしと伝わってきます。
上記は、中でもいちばん印象深かった場面。sandyなんて、だれでもわかりそうな単語なのに、ずっとそのことを考えつづけている。
迷ったとき、これから何度も何度も、たちかえって読み返したい本です。合掌。

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