スペイン語圏の子どもの本

絵本『パパとわたし』

127_3 『パパとわたし』

マリア・ウェレニケ作
宇野和美訳
光村教育図書
本体価格1200円
わたしがパパといっしょにいたいと思うとき、パパはいっしょにいたくなかったり、その逆だったり。そして、ふたりともいっしょにいたいと思うときもある。父と娘のその時々、それぞれの思いを繊細に描いた詩情あふれる絵本。
ウェレニケは、アルゼンチンで人気上昇中の絵本作家。スペインのオドリオゾーラもそうですが、この作家も、シンプルな余白のある、沈黙で語りかけるような画面構成が印象的。
オリジナルはブラジルで刊行されています。「ポルトガル語なんですけれど」と編集者に声をかけられたとき、「ダメダメ、できません」と答えたのですが、聞いてみるとウェレニケとのこと。なら、オリジナルはスペイン語じゃないの、というわけで訳すことに。
出来上がった本を手にしたとき、私の地元で長く文庫をなさっていたYさんのことを思い出しました。文章を書くのが好きで、冬になると毛糸の帽子をかぶり、とっくりのセーターを着て、ひょうひょうと九条やアンネの話をし、みんなのすることを楽しそうに眺めていたYさんと、このパパの面影がどことなく似ていて。
アルゼンチンのとびきりすてきな絵本、大事な人といっしょに楽しんでもらえたらうれしいです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

講演「スペイン語圏の児童書出版事情と各国の絵本」

ずいぶん長いこと更新をおこたっていたので、改めて書くのも恥ずかしいのですが、下記のとおり、話をすることになりましたのでお知らせします。

第70回読書の会
演題:スペイン語圏の児童書出版事情と各国の絵本
講師:宇野和美
日時:2012年9月21日(金) 18:30〜20:30
場所:文京区シビックセンター 5階会議室A
参加費:1000円
お申し込み・お問い合わせはこちら

歴史的不況の中、スペインでは児童書だけはここ5年売上が伸び、小さな絵本出版社がとても元気です。またスペ イン語圏では近年、国をこえて活躍する作家や画家がますます増えています。メキシコのブックフェアや20年以上にわたるブックハンティングの中で見てきた出版事情の変遷や最近の動向、そして、自ら手がけた絵本のことなど、実物をいろいろ持参して、お話する予定です。

会員に限らず、どなたでも参加できるそうですので、ご興味のある方、お越しください。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

アリアドネの糸

111_2『アリアドネの糸』
ハビエル・ソビリーノ文
エレナ・オドリオゾーラ絵
宇野和美訳
光村教育図書
本体価格 1500円

お父さんに叱られて、家をとびだしたアリアドネ。何気なくポケットに入っていた糸だまをとりだし、ポーンとけりました。糸はほどけて、木にからみついてブランコになり、綱渡りの綱になり、傘になり……。自在に形をかえる糸で遊んだアリアドネが最後に行きついたのはおうちの前。こんがらかったアリアドネの心の糸は、無事ほどけるのでしょうか。

幼稚園に行くか行かないかのころ、暗くなる前に帰ってきなさいと言われていたのに、夢中で遊ぶうちに気づくとあたりが夕闇に包まれていて、あわてて帰ったものの、「暗くなる前に帰るやくそくだったでしょ。帰りたくないなら、お外の子になりなさい」と、母にしめだされ……心細かったそんな思い出が、訳しながらふっとよみがえってきました。
シンプルながら奔放な線と大胆な余白で、子どもの悲しみに静かによりそうオドリオゾーラの世界をお楽しみください。

編集担当のYさんが苦労されていたのが紙。「原書と同じような紙がなかなかないんです!」と、白さの加減とインクののり具合(しずみ具合?)を確かめながら、さんざん選んでこの紙になりました。印刷のことは編集者さんにおまかせなのですが、そうやって少しでもよい本にしようと尽力していただけるのはとてもありがたく、うれしいことでした。

昨年後半から年明けまで目の回るような日々が続き、久しぶりのブログになりました。
ご感想など、どうぞお寄せくださいね。


| | コメント (0) | トラックバック (0)

タシエスの新着画像

Tssies_nrcpc_pequeno_2

今月、ブラティスラヴァで行われたイラストレーション展に行った知人からタシエスの近況を聞き、久しぶりに連絡をとってみたら、今月、バルセロナであった『名前をうばわれたなかまたち』の展覧会のために新しくかいたという絵の画像を送ってくれました。
「自由に送っていいよ」というのは、「みんなに広めてくれ」ということかなと解釈し、こちらにアップ。

展覧会のオープニングでは、2人の教育心理の専門家と、カタルーニャ州政府の教育行政の方、この本の編集者のラウンドテーブルがあったそうです。とてよいイベントだったとのこと。

日本ではさ・え・ら書房で刊行になったこの作品、『子どもの本棚』10月号の複眼書評でとりあげられています。
来月にはギリシャでも翻訳出版されるそうです。

まだ見たことのない方、ぜひ手にとってみてください。詳しくはこちら

| | コメント (0) | トラックバック (0)

スペイン語圏の絵本に関する講演2つ

この秋、スペイン語圏の絵本について、講演を2つ予定しています。
どちらも申込みが必要です。ご興味のある方、どうぞお運びください。

◎「Hola, amigos! ~スペイン語圏の絵本の魅力と翻訳の世界」
日時: 9月10日(土)午後2時~3時30分
場所: いたばしボローニャ子ども絵本館
定員: 30名
無料
絵本を訳しはじめたきっかけや、翻訳の楽しみ、学習方法、また、スペイン語圏の絵本事情について話します。
※8月31日(水)までに要申込みです。
  申込み方法など詳しくはこちらをご覧ください。

◎多文化連続講座 「絵本で知る世界の国々」
4.多様な民族の声~アフリカ・中南米・スペイン・ポルトガル

日時: 11月14日(月) 午前10時30分~12時30分
場所: 地球市民かながわプラザ1階大会議室(JR 根岸線本郷台駅下車徒歩3分)
『多文化に出会うブックガイド』(読書工房)の編著者である「世界とつながる子どもの本棚プロジェクト」が企画した連続講座の中の1日。
人々・文化・生活に出会える絵本を紹介していきます。

ほかの日程と内容は以下のとおり。
10月3日 広がる・つながる絵本の世界~イギリス・アメリカ・日本 講師:依田和子
10月17日 違っているから素敵、同じだから嬉しい~アジア・中近東・オセアニア 講師:中村裕子
10月31日 絵本に託す思い~ヨーロッパ 講師:神谷友
11月28日 ロシア・旧ソ連邦の絵本&国境を越えた絵本作家たち +おはなし会 講師:依田和子   
参加費:5000円(全5回参加が基本。ただし、欠席の回がわかっている場合は回数分で可)
定員:40名(先着順)
※9月20日までに要申込みです。
申し込み・問い合わせ: 依田 tel&Fax 045-894-0054 / 中村 ciaoyuko@sd1-duplex.bb4u.ne.jp
主催:かながわこどもひろば

板橋は、「翻訳」を中心にした話です。ラテンアメリカにまつわる絵本『むこう岸には』、『ポインセチアはまほうの花』、『ペドロの作文』、9月刊行の『エロイーサと虫たち』翻訳の舞台裏についてもふれる予定。
神奈川の区分は「なんだろ、これ?」と思う方もいるかもしれませんが、大航海時代に大西洋をとりまいて広がった新世界が範囲です。お楽しみに! 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011イタリア・ボローニャ国際絵本原画展

Princesa_noche板橋区立美術館で、夏恒例のボローニャ国際絵本原画展が開催されています。20カ国76人(組)の全入賞作品を公開。

会期:~2011年8月14日
時間:9:30~17:00
板橋区立美術館 アクセス詳しくはこちら

スペインの絵本に関心のある方に注目は、特別展示はフィリップ・ジョルダーノ。SM出版賞受賞作の絵本La Princesa Noche Resplandeciente (かぐや姫・SM出版刊)の原画とスケッチが展示されています。
竹取物語をテーマにした絵本をつくるにあたって、「日本に滞在してストーリーやモチーフを取材する一方で、個人的な表現や自由な解釈を積極的に取り込んで製作しました」との紹介文。
どんなかぐやひめがとびだすかは、見てのお楽しみ。

講演会やイベントも充実。(敬称略)
連続トーク「絵本の力」 コーディネーター:広松由希子
7月24日(日) 「絵本は今―編集者の声」
木村真(学研編集者)/筒井大介(イースト・プレス編集者)/永牟田律子(童心社編集者)

7月31日(日) 「作家が考える―絵本のもつ力」
なかがわちひろ/村上康成

8月14日(日) 「絵本と社会」
佐々波幸子(朝日新聞記者)/アーサー・ビナード(詩人)/松本猛(絵本評論館・ちひろ美術館顧問)

入選作の全点展示はみごたえがあり、昨年も、さまざまな挑戦に、世界の若手イラストレータの熱さ、ユニークさをひしひしと感じました。今年はどんな驚きが待っているでしょう。楽しみです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

第22回ブラティスラヴァ世界絵本原画展 今期最終!

昨夏から日本全国で巡回していた「ブラティスラヴァ世界絵本原画展 世界の絵本がやってきた」ですが、いよいよこの夏のうらわ美術館(さいたま市)で最後になります。

会期:8月31日(水) 10時~17時
(休館日:月曜、7月19日)
場所:うらわ美術館
(浦和駅西口から徒歩7分。ビル地下に有料駐車場あり)

タシエスの「まいごの幼子」の原画もいよいよ見おさめ。見そびれていた関東近郊の方、どうぞお運びください。

7月30日午後2時から 智内兄助氏(金牌受賞)ギャラリートーク。
お子様づれで自由に工作したり、絵を描いたりできる創作コーナーもあり。
チェコの繰り人形も同時展示です。

お見のがしなく!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

フーくんのおへそ

Ombligo_de_juanito『フーくんのおへそ』
ラモン・アラグエス文
フランチェスカ・ケッサ絵
宇野和美訳
光村教育図書
本体価格 1400円

フーくんは4さいと4かげつとよっかの男の子。あふろでパパにからだをあらってもらっていると、あれあれ、指がおなかにはいっちゃった。どうしたのかな?

はっきりした色調で大きく描かれた人物の明るさが魅力のこの絵本、刊行後いちはやく、図書館の読み聞かせでとりあげてくださった図書館員さんのお話では、読んでいくうちに、聞いている子どもだちがシャツをめくって、自分のおへそをのぞきこんで、とてもかわいかったとのこと。
実はこの絵本、おへそのところだけ、リアルなおへそ(写真?それとも絵?)がコラージュになっているのです。
おへその絵本といえば、私も大好きな柳生弦一郎さんの『おへそのひみつ』(福音館書店)がありますが、幼い子どもたちには、ストーリーがあって、お父さんやお母さん、おねえちゃんやおじいちゃんといった家族のいる日常で展開するこの絵本もオススメ。文章を担当したアラグエスさんは、スペインの生物学研究者です。

昨年9月にIBBY(国際児童図書評議会)の世界大会のためにサンティアゴ・デ・コンポルテーラ(スペイン)に行った折に、そこから車で1時間ほどの町ポンテベドラにある出版社OQO社をたずねたときに見せてもらった絵本の1冊。
原題は El ombligo de Juanito。(フアニートのおへそ)。翻訳で主人公の名前を変えるのは賛否両論ありますが、今回は、幼児向けの絵本なので、日本の子どもにとっての言いやすさと親しみやすさを優先して「フーくん」としました。
知識の絵本の要素も持つ親しみやすい物語絵本、お楽しみください。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

making of 子どもの本でラテンアメリカめぐり展

03303月11日(金)の午後、私たちは翌12日(土)、13日(日)に予定されていた「子どもの本でラテンアメリカめぐり展」の設営のため、ゲートシティ大崎にいました。
未曾有の大災害のため、この展覧会は中止となりましたが、私たちがどのような思いでこれを形にしてきたかを書きとめておきたいと思い、記すことにしました。

一昨年に立ち上げた日本ラテンアメリカ子どもと本の会(クリラフCLILAJ) http://clilaj.blogspot.com は、

1)日本の人びとに、ラテンアメリカの文化や人びとのことを伝えていく。
2)日本にくらすラテンアメリカ出身者やその子どもたちが、出身地のことばや文化を大切にできるようお手伝いをする。
3)ラテンアメリカ出身者と日本人が互いの良さを認め合い、ともに生きていける社会づくりに貢献する。

という目的をかかげています。もとはといえば、ミランフ洋書店を通じて知り合った方から、在日の中南米の人たちのために、バイリンガルの絵本を作りたいと思っているという話を持ちかけられ、スペイン語にかかわる者として自分も何かできないかと思ったのがきっかけ。そして、その最初の具体的活動として考えたのが、ラテンアメリカに関する、おすすめの子どもの本リストをつくることでした。
これは、6年ほど私がかかわってきたアフリカ子どもの本プロジェクトの活動をならったものですが、昨年の2月ごろから、仲間たちと何度も集まって本を読みあい、私たちのおすすめの本のリストを作ってきました。
そんな折、毎年3月に大崎で行われる子どもの本の日フェスティバルで場所をいただけるということが確定し、図書展の準備をはじめました。

アフリカ子どもの本プロジェクトでも、「アフリカを読む、知る、楽しむ子どもの本展」という巡回展を行っていますが、その図書展と、クリラフの展覧会の大きな違いは、図書展を3カ国語の構成にしたことです。
私たちは、日本人とラテンアメリカにつながる人たちが、いっしょにラテンアメリカに関する本を手にとって楽しめる図書展にしたいと考えました。
日本人が「ふーん、ラテンアメリカってこういうところなのか」と思うと同時に、ラテンアメリカから来た人たちが、「うん、私たちのふるさとって、こういうところだよ。、日本でもこんなふうに紹介されているんだな」と思ってくれたらいいなと思い、展示する本一冊一冊に、その本でどういうことがわかるかを説明した解説を書き、それをポルトガル語とスペイン語に訳そういうことになりました。展示する数は少なくてもいいから、3カ国語の書誌の形にはしようと。
しかし、スペイン語は自分たちでなんとかするが、ポルトガル語はどうしようかと言っていたときに手伝ってくれることになったのが、東京外大在日外国人ネットーワーク~アミーゴス~の大学生です。本業とのかねあいで、日本語書誌の準備が押せ押せになったにもかかわらず、試験と就職活動などの合間を縫って、厳しいスケジュールの中、報酬も出せないというのに、ほんとうによく協力してくれました。
また、スペイン語の翻訳は、在日ペルー人の知人やスペイン人の友人にチェックをしてもらいました。お礼をできないと最初からことわっていましたが、かえって励ましていただくほどで、ありがたいことでした。
展示の本は、自分たちの手持ちの本を中心にしましたが、一部は出版社にお願いしてご寄贈いただきました。
せっかくいただいた本ですので、これからブログでじゅんじゅんに書誌とともに紹介していくつもりです。

それと、ラテンアメリカ各地で出版されている原書の絵本も展示することにしたのは、ポルトガル語やスペイン語を母語とする方が手にとったとき、自分たちのことばの美しさを確かめ、思わず子どもに読んであげたくなるといいな、こんなすてきな本もあるのかと発見してくれるといいなと思ったからです。
ラテンアメリカにつながる人たちの中には、親は日本語が苦手で、子どもは日本語しか話せないという場合もあるときいていたこと、また、内容がわかれば、日本の図書館員が中南米出身の利用者のために原書を図書館においてみようと思うかもしれないという思いから、原書の絵本には、できれば翻訳をはりこみ、そうでなくても、日本語の解説をつけました。

展示では、子どもの本の展示とべつに、ラテンアメリカの歴史を考えるコーナーをつくりました。これは、ラテンアメリカというのが日本において多くの場合、「発見された」土地として語られ、見られていることが、選書の過程で見えてきたことから発したものです。大航海時代や三角貿易など、歴史の大きな流れの中で、ラテンアメリカをとらえる視点を、なんらかの形で提供していきたいと思いました。クリラフ内で「植民地部会」と呼んでいるプロジェクトチームができ、意欲的な企画を提案していきました。
こんな本があったのかという発見もありましたが、これは部会のメンバーが、別の機会に公表していくことでしょう。

また、会場で何かイベントができないかと話し合ったとき、メンバーの1人がメキシコの切り紙細工、パペル・ピカドを持ってきたことから、パペル・ピカドチームが生まれ、どんな紙ならみんなでできるか、はさみはどうするか、説明はどうするかと盛り上がり、楽しくなってきました。上の写真で、万国旗のように天井からぶらさがっているのが、このパペル・ピカドです。

もうひとつ、本の中にこたえが見つかるクイズをできないかということで、クイズラリーが生まれました。小学校で読書指導員の経験があるメンバーが、問題は5題で十分、おもしろい3択に、と提案し、全員で問題例をだしあって、すてきなクイズ問題ができあがりました。

さらに、書誌のポルトガル語訳を担当した大学生の方が、カポエイラを習っているというのをきいて、カポエイラの先生に来て踊っていただくようお願いしました。他のイベントのじゃまにならないようにと、お昼に時間を設定し、私もはじめてじかに見る本場のカポエイラをとても楽しみにしていたのでした。

…という具合で、図書展を作っていく試行錯誤の中で、さまざまなことがありました。
今回は地震により中止となってしまいましたが、開催のお知らせをしたところ、さまざまな方から激励をいただきました。
開催はできませんでしたが、作り上げていく過程で得たものや、確認できたことを大切に、次につなげていきたいと思っています。改めて開催のお知らせをできる日がはやく来ますように。

写真は、設営準備が終わったところで、メンバーの1人が撮った携帯写真。写真ではよく見えませんが、左のガラス面には、「子どもの本でラテンアメリカめぐり展」という文字看板がおどっています。
図書展にご興味のある方は、tokioclilaj@gmail.com までご連絡ください。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

フォスターさんの郵便配達

9784037445904 『フォスターさんの郵便配達』
エリアセル・カンシーノ作
猫野ぺすか挿絵
宇野和美訳
偕成社
本体価格 1400円

舞台は1960年代、フランコ独裁下のスペイン南部の港町。漁師の父親と暮らす少年ペリーコは、2年前に母を亡くしてから父親にかまわれなくなり、学校にもきちんと通わなくなりました。そんなある日、村の唯一のイギリス人、フォスターさんと知り合い、それがきっかけで、一見平和な村に隠されている現実に気づいていきます。

10月に作者のカンシーノさんが来日した折、もう1点の翻訳作品『ベラスケスの十字の謎』については、作品を書いたきっかけを講演でふれましたが、これについては語りませんでした。
たずねてみると、舞台のモデルとなったプンタ・ウンブリーアは自分にとって縁の深い土地なので、いつかそこを舞台に作品を書いてみたいと思ったいたとのこと。そこで、最初は村の宿屋の娘が、灯台守のところに通うようになるとという話を書きはじめたが、女の子が主人公というのは思うようにいかなかった。しばらくそのままになっていたが、あるとき、フォスターさんの帽子をペリーコが拾うシーンを思いつき、それを書いてみたら、一気に書けた、と語っていました。

表紙の絵は猫野ぺすかさん。多色刷りの版画です。この画像だと土の色といっしょになって見えにくいですが、下のほうにある黄色い花はレダマ。スペインではそこらに自生していて、春先から初夏にかけて、黄色い香りのよい花をつけます。また、裏表紙の小鳥はゴシキヒワ。カンシーノさんがご自分でも気に入っているというシーンに出てくる鳥で、これを見て大喜び。
写真を勉強したことをある猫野さんは、ペリーコがはじめてシャッターを押すところにジーンときたとこのこと。すてきな装画をどうもありがとう!

本作は、昨年度アランダール賞受賞作で、今年度スペイン国民児童文学賞最終候補作。カンシーノさんは、今年この作品ともう1作が候補となり、もう1作のほうでみごと国民児童文学賞を受賞しました。小さな町の集合住宅に住む、多様な人種の若者たちをめぐる受賞作Una habitacion de Babel(バベルの部屋)も、いつか訳したい作品。
スペインでも評価の高いあぶらののりきったエリアセル・カンシーノ作品、ぜひお楽しみください。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧