絵本

絵本『パパとわたし』

127_3 『パパとわたし』

マリア・ウェレニケ作
宇野和美訳
光村教育図書
本体価格1200円
わたしがパパといっしょにいたいと思うとき、パパはいっしょにいたくなかったり、その逆だったり。そして、ふたりともいっしょにいたいと思うときもある。父と娘のその時々、それぞれの思いを繊細に描いた詩情あふれる絵本。
ウェレニケは、アルゼンチンで人気上昇中の絵本作家。スペインのオドリオゾーラもそうですが、この作家も、シンプルな余白のある、沈黙で語りかけるような画面構成が印象的。
オリジナルはブラジルで刊行されています。「ポルトガル語なんですけれど」と編集者に声をかけられたとき、「ダメダメ、できません」と答えたのですが、聞いてみるとウェレニケとのこと。なら、オリジナルはスペイン語じゃないの、というわけで訳すことに。
出来上がった本を手にしたとき、私の地元で長く文庫をなさっていたYさんのことを思い出しました。文章を書くのが好きで、冬になると毛糸の帽子をかぶり、とっくりのセーターを着て、ひょうひょうと九条やアンネの話をし、みんなのすることを楽しそうに眺めていたYさんと、このパパの面影がどことなく似ていて。
アルゼンチンのとびきりすてきな絵本、大事な人といっしょに楽しんでもらえたらうれしいです。

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アリアドネの糸

111_2『アリアドネの糸』
ハビエル・ソビリーノ文
エレナ・オドリオゾーラ絵
宇野和美訳
光村教育図書
本体価格 1500円

お父さんに叱られて、家をとびだしたアリアドネ。何気なくポケットに入っていた糸だまをとりだし、ポーンとけりました。糸はほどけて、木にからみついてブランコになり、綱渡りの綱になり、傘になり……。自在に形をかえる糸で遊んだアリアドネが最後に行きついたのはおうちの前。こんがらかったアリアドネの心の糸は、無事ほどけるのでしょうか。

幼稚園に行くか行かないかのころ、暗くなる前に帰ってきなさいと言われていたのに、夢中で遊ぶうちに気づくとあたりが夕闇に包まれていて、あわてて帰ったものの、「暗くなる前に帰るやくそくだったでしょ。帰りたくないなら、お外の子になりなさい」と、母にしめだされ……心細かったそんな思い出が、訳しながらふっとよみがえってきました。
シンプルながら奔放な線と大胆な余白で、子どもの悲しみに静かによりそうオドリオゾーラの世界をお楽しみください。

編集担当のYさんが苦労されていたのが紙。「原書と同じような紙がなかなかないんです!」と、白さの加減とインクののり具合(しずみ具合?)を確かめながら、さんざん選んでこの紙になりました。印刷のことは編集者さんにおまかせなのですが、そうやって少しでもよい本にしようと尽力していただけるのはとてもありがたく、うれしいことでした。

昨年後半から年明けまで目の回るような日々が続き、久しぶりのブログになりました。
ご感想など、どうぞお寄せくださいね。


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エレナ・オドリオゾーラの映像

スペインで今、もっとも注目されている絵本画家の1人、エレナ・オドリオゾーラが自分のことを語っている映像をご紹介。ちょっとうれしいでしょう? でも残念、話しているのはバスク語です。

 ビデオはこちらから

スペインのあるサイトで「バスク語なので何を話しているかわからないけれど、話し方やたたずまいだけでも興味深いでしょう」と紹介されていたもの。でも、やっぱり内容を知りたかったので、バスク出身の友人に見せて、だいたいの内容を教えてもらいました。文法的にはめちゃくちゃのバスク語とのこと。

(棚に飾ってある鳥の置物のこと) 「飛ばないのよ、そこに座ってるだけ。友だちにコレステロールたっぷりの鳥って言われちゃった…」
「小さい頃は、いつも絵を描いていました。広告代理店に勤めているとき、エルカル(バスクの出版社)で描いてから、暇をみて教科書なんかに描くようなったの。そのうちその代理店が店じまいすることになってね、うれしかったわ。自分が何をすればいいかもうわかっていたから」
「一番最近のはこれ。エウスカディ賞をもらった。コルタサルの文章を渡されて最初はどうすればいいか戸惑ったけど、やってみたら楽しかったしなんとか描けたわ」
「好きなイラストレータはいるわよ。 (1人は聞き取れず)アーサー・ラッカムとか。イラストレータだけじゃなくて、絵描きや、外を歩いたり何かを見たり、無意識のうちにいろんなものからヒントを得ていると思う」
「美意識というのか、たとえば首は太くなくちゃだめなの。ていうか、がっしりしていないとだめ。そうすると安定感みたいなものが得られる」
「私は子どもたちのために絵を描いているんじゃない。人のためじゃない。自分のために描いているの。そうじゃないと描けない」
「好きなことをやっていられるのは、お金にかえられないこと」

窓から見える風景もステキですね。
日本で出ているオドリオゾーラの絵本はこちらをどうぞ。

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ふゆのゆうがた

Tardeinvierno 『ふゆのゆうがた』
ホルヘ・ルハン文
マンダナ・サダト絵
谷川俊太郎訳
講談社
本体価格 1400円

ふゆの午後のおるすばん。女の子はお母さんをまちながら、くもったガラスをゆびでこすってお月さまをつくります。お月さまの中からずっと外を見ていたら、ようやくお母さんが見えてきて、女の子はうれしくなって……。

ポッと、心があったかくなるお話です。どんよりとした冬の午後の色あいと、あざやかな色彩のコントラストがきれい。
ホルヘ・ルハンは、アルゼンチン生まれでメキシコ在住の詩人でミュージシャン。ここ数年、さまざまなイラストレータとコラボで子ども向けの絵本(詩画集)をたくさん出版している、注目度の高い作家です。
この本が日本で出たとは知らなかったので、クリスマスに書店で見つけてびっくりでした。

お母さんといっしょのしあわせがつまった絵本。あたたかいお部屋で、子どもをひざにだいて読んでやれたらいいなあ(我が家はもうみな大きくなってしまって、そんなことしようとしたら怖がられます!)。

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コドリーロのおやつ

B0120877_1562881   『コドリーロのおやつ』
ロベルト・アリアーガ文
ちば みなこ絵
宇野和美訳
光村教育図書
本体価格 1400円


わにの子どものコドリーロはおなかがペコペコ。そこでおかあさんを呼びますが、卵をだいているおかあさんは、巣をはなれられません。コドリーロはひとりでおやつをさがしにいき……。

真っ赤なオビがついて、スペイン語版よりずっとポップな印象になりました。スペインの絵本ですが、このかわいいワニの子のうみの親は日本の若手イラストレータちばみなこさん。「ママ~、おなか すいたあ!」とすぐいう子に読んであげるとよろこばれそう! 親子でお楽しみください。

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ブラティスラヴァ世界絵本原画展でスペインの絵本がグランプリに

Elninoperdidoスロヴァキアで隔年開催されるブラティスラヴァ世界絵本原画展の今年の入賞作品が9月4日に発表され、大賞にあたるグランプリに、スペインの作家の絵本が選ばれました。

タイトル El nen perdut
スペイン語ではEl nin~o perdido
作者 ジュゼップ=アントニ・タシアス Josep Antoni Tassies
出版社 Editorial Cruilla
(スペイン語版はEdiciones SM)

パジャマ姿の小さな子が、階段の上で星のかたまりをみつめている表紙が印象的。
1月6日の晩、生誕人形のイエスさまがいなくなっているのに気づいた女の子が、迷子になったイエスさまをとうとう見つけて連れてかえり、ベッドで眠りにつくと、翌朝三賢王からのプレゼントが届いていたという、スペインのクリスマスストーリーです。

赤ん坊のイエスさまをあちこちにさがしにいく場面は、絵からふくらんだにちがいないイマジネーションにあふれ、いつまでも見あきません。大判の絵をじっくりと楽しみたい絵本。

ミランフ洋書店でお取り寄せできます。ご希望の方、お問い合わせください。

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あくびばかりしていたおひめさま

Akubi_img_2 『あくびばかりしていたおひめさま』
カルメン・ヒル文
エレナ・オドリオゾーラ絵
宇野和美訳
光村教育図書
本体価格 1500円


おひめさまは、年がら年じゅうあくびばかり。こまってしまった王様は、あの手この手でおひめさまのあくびを止めようとしますがうまくいきません。そんなある日、お城の庭でおひめさまの前に男の子があらわれ……

バスク出身の人気イラストレータ、オドリオゾーラの新刊です。スペインでは、1月に刊行された『天のおくりもの』よりも前に発表された作品。色づかいやシンプルな線、余白たっぷりの画面構成に、オドリオゾーラの個性が強く出た美しい絵本です。
おひめさまのあくびがどうなったかは、読んでのお楽しみ!

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スペイン語に訳された日本の絵本(2)

Yagyu柳生弦一郎さんのからだの絵本6冊(福音館書店)が、スペインで昨年翻訳出版されました。

『あしのうらのはなし』(1982)
Plantas de los pies

『はなのあなのはなし』(1982)
Agujeros de la nariz
『おっぱいのひみつ』(1989)
Tetas

『いーはとあーは』(1997)
Dientes
『かさぶたくん』(1997)
Costras
『おへそのひみつ』(1998)
Ombligos


版元はMedia Vaca。バレンシアから個性豊かな絵本を発信している出版社です。CLIJ(Cuaderno de Literatura Infantil y Juvenil)という児童書専門誌の5月号にのった紹介記事を見ると、文体も書き文字もオリジナル版の雰囲気どおりに仕上がっているよう。
たとえば、『いーはとあーは』の、「よっちゃんの はは どんなんかなあ?/こんあんらお。」のくだりは、??Como estan tus dientes, Yotchan? Ejtan aji. うーん、うまい!!

説明のわかりやすさ、おもしろさには、その国の読者の持つ文化が深くかかわっているものなので、知識の本は意外と国境を越えにくいものです。幼い読者にぴったり目線を合わせた、絵と文がひびきあう絵本がまだまだ少ないスペインで、知識の本としても絵本としても、とても新鮮なシリーズだろうと思います。

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特急キト号

Quitogo_img 『特急キト号』
ルドウィッヒ・ベーメルマンス作
ふしみみさを訳
PHP研究所、2006年
本体価格1500円


小さな村の駅に連れてこられた赤ん坊のペドロは、おねえさんがオレンジを売っているまに、大好きな真っ赤な機関車キト号にのりこんでしまいます。キトに着いてペドロに気づいた車掌さんは、さあたいへん!
 
前にこのブログで『アンデスの少女ミア』を紹介したとき、「欧米人が中南米を描いた絵本ならほかにもある」といって教えてもらったのがこの作品。原書は1938年刊。『げんきなマドレーヌ』や『山のクリスマス』で知られるベーメルマンスが、エクアドルへの旅をもとにえがいたものだそうです。

ベーメルマンスの目には、ポンチョを着て、大きな帽子をかぶったインディオの子どもが、とてもかわいらしく映ったのかもしれませんね。子どもがトウモロコシの番をしていたり、お父さんがつぼを作っていたりする光景を、きっと実際に見たのでしょう。エクアドルに親しむきっかけになりそうな絵本。70年前の作品だというのは、頭に入れておきたいですが。

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アンデスの少女 ミア ―希望や夢のスケッチブック

Andesmia_img 『アンデスの少女 ミア』
マイケル・フォアマン作
長田弘訳
BL出版
本体価格 1500円


サンジョルディの日、自分へのプレゼントにと買ったのがこの絵本。アンデスの山々をあおぐチリの集落の、廃材の家で暮らす女の子を主人公にした心あたたまるお話です。
毎日街にがらくたを売りに行くお父さんは、ある日ミアに子犬を連れてかえってくれます。ところが、かわいがっている子犬が迷子になり、山の上までさがしにいったミアの前に、思いがけない景色がひろがります……。
あちこちに挿入されたスケッチに、チリの人々のくらしぶりがうかがわれます。長田さんの翻訳はきびきびした言葉のなかに、深い味わいがあります。
実際にフォアマンがチリに行ったときに出会った家族から、インスピレーションを得てかいた作品とのこと。ラテンアメリカを舞台にした貴重な絵本です。

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